土地や建物には、取得費や設計・工事費のほかに税金もつきものです。
税制は複雑で取っ付きにくいものですが、賢く活用すれば合法的に軽減できるものもたくさんあります。知らずにいると結構大変ですが、ファイナンシャルプランナーと建築士の立場から簡単にいくつかの税金対策を挙げてみました。
土地や建物をお持ちの方やこれから取得される方などのご参考になればと思います。
消費税増税の話題に隠れがちですが、平成27年1月1日より相続税の基礎控除額が引き下げられることとなります。基礎控除額とは聞きなれない方もいると思いますが、単純に言って相続財産のうち税金がかからずに控除される金額ということです。
例えば、8,000万円の相続財産があって、相続人数が3人である場合
平成26年12月31日までは
基礎控除額が 5,000万円+1,000万円×相続人数 3人 =8,000万円となるので、相続財産の8,000万円から基礎控除額の8,000万円を引くと0円
つまり、相続税はかかりませんでした。
しかし、税制改正により平成27年からは
基礎控除額が 3,000万円+600万円×相続人数 3人 =4,200万円 となりました。
よって、相続財産から基礎控除額の4,200万円を引いた3,800万円が相続税の課税対象となるのです。
この改正によって、課税対象者が平成26年以前より、1.5倍程度増える見込み とされています。
今まで自分には関係ないと思っていた方も、土地や建物を所有している方は課税対象になる可能性は大いにありますのでご留意ください。
さあそこで、いくつかの対策を見てみましょう!
Point1 現金・預貯金を土地・建物の不動産に! ~ 相続税 ~
相続税の評価対象となる相続資産は、現金や株式などの現金資産で保有しているものと比べ不動産として所有しているほうが相続税評価額が下がり、課税対象額が下がることで税負担が軽減されます。
土地の場合、路線価または倍率方式による評価額で判断されるため同額の資産価値を 20%程度 、
建物の場合、固定資産評価額での価値となるため、30%程度 下げることができます。
アパートやマンション等貸家にした場合はさらに、土地35%程度、建物60%程度まで 下げることができます。
最近よく賃貸オーナーの話を聞くのはこのためです。
Point2 土地を正しく分割! ~ 相続税 ~
相続が発生しそうな土地をお持ちの方向けのお話ですが、土地を上手に分割(不動産登記上の《分筆》)すれば、土地の相続税評価額を下げることができ相続税が軽減されます。
例えば、200㎡の土地をテクニックを用いて100㎡の土地2つに分割すれば、評価額を 2,000万円程度 下げることができます。
相続財産の評価額をお減らすことで相続税は大幅に節税することができます。
なお、分筆といっても土地に目に見える線が引かれるわけではなく、塀などで遮蔽する必要はありません。あくまでも税法・登記上の分割ですので、建築する上では所有者の承諾があれば特に問題はありません。
Point3 小規模宅地等の特例を活用! ~ 相続税 ~
一定の要件を満たすことで、小規模宅地等の特例を利用すれば相続財産の評価額は最大で 80%に 下げることができます。
一定の要件とは色々とありますが、簡単に言えば相続を受ける人が自家用に取得し引き続き使用するなどです。対象は、居住用・事業用の宅地などです。
最近 二世帯住宅 にする人が増えているとニュースなどで聞かれた方も多いのではないでしょうか?
それはこの特例も寄与していると考えられます。
同居していることも要件の一つとしてありますので、少子高齢化等先のことを考えると今後の選択肢としても大いに検討されうることでしょう。
二世帯住宅の解釈も平成26年1月1日以降変更され、今までは出入口も別で内部の行き来ができない完全分離型(例えて言えばテラスハウス的なもの)は、現行では別世帯と定義されていましたが、変更後はこのような形でも二世帯住宅と認められるようになります。(区分登記されているものは除く)
一つの土地に親世帯子世帯がプライバシーを保ちながら税金も助かる、二世帯住宅はお勧めの方法です。
ただし、この特例を受けるには申告時までに宅地の遺産分割を終えていないといけない点に注意が必要です。
また、平成27年1月1日以降に特例要件が拡大され、居住用宅地の上限面積と、事業用と居住用の宅地を併用する場合の限度面積が広がりました。
平成30年4月1日以降の相続開始案件より、この特例(家なき子特例)を受けられる要件がより厳格化されました。
特例を受けられる対象は、同居人以外では『3年以上賃貸住宅に住まれていた別居親族』となります。
Point4 相続時精算課税制度を活用! ~ 相続税・贈与税 ~
家を建てるなどで自己資金が不足する場合、親から資金援助をしてもらうことがありますね。
援助してもらう方法はいくつかありますが、相続時精算課税制度を利用するという方法も考えられます。
簡単に仕組みを説明しますと、本来相続時に受取るであろうものを生前に贈与として先に受取るということです。累計金額 2,500万円まで 贈与税が非課税になります。高額な資産を一度に贈与しやすいというメリットがあります。
例えば、3,000万円の贈与を受けた場合、2,500万円は非課税で残りの500万円には贈与税がかかります。
ただし、贈与を受けた2,500万円は相続時に相続財産に加算されますので要注意。相続税税率と贈与税税率の兼ね合いや、贈与時点での時価が相続時に反映されますから、価値が上がった場合はメリットとなり下がったらデメリットとなりますので十分な検討が必要です。
Point5 契約書に貼る印紙代が引下げ中! ~ 印紙税 ~
不動産を売買するときや建物を建てる際に設計や工事を依頼するときに契約書を交わします。
その時に契約書類(課税文書)に印紙税として印紙を貼ります。
印紙税はすでに軽減措置をとられているものもありますが、さらに平成26年4月1日から令和9年3月31日までの期間税額が引き下げられることになります。
印紙税は契約金額によって税額が異なりますが、例えば工事費1,000超~5,000万円以下の場合、10,000円 に減額されます。本来は(軽減措置が取られていなければ)2万円ですから 1万円 の減税です。
金額的には少なく感じるかもしれませんが、不動産を取り扱うときは印紙を何枚か使いますし、色々お金がかさむときですから助かります。
なお、契約書の金額を消費税額を別に記載することで消費税抜きの金額が課税対象になるということに注意してください。
軽減措置が また延長されました!(令和9(2027)年3月31日まで)
Point6 不動産取得時の登記にかかる税金が引下げ中! ~ 登録免許税 ~
不動産を取得した場合に法務局などで登記を行いますが、その際に登録免許税が課税されます。
自己の居住用として取得した場合、一定の要件を満たしていれば期間税額が軽減されています。令和9年3月31日までの引き下げられることになります。
建物に関しては、令和8年3月31日までの期間、所有権移転登記が2%から1.5%、令和9年3月31日までの期間、所有権保存登記が0.4%から0.15%、抵当権設定登記が0.4%から0.1%と税率が軽減されています。
更に、長期優良住宅などの場合であれば、所有権移転登記並びに所有権保存がそれぞれ0.2%、0.1%(省エネ住宅は共に0.1%)に軽減されます。(令和8年3月31日まで)
課税標準額(評価額)が1,000万円だとすると
所有権移転登記にかかる課税は、1,000万円 ✖ 2% = 20万円 が 1,000万円 ✖ 1.5% = 15万円
所有権保存登記にかかる課税は、1,000万円 ✖ 0.4% = 4万円 が 1,000万円 ✖ 0.15% = 1.5万円
と7.5万円の減税となります。
軽減措置が こちらも延長されました!(令和9(2027)年3月31日まで)
Point7 不動産取得時にかかる税金も引下げ中! ~ 不動産取得税 ~
不動産を取得した場合、土地や建物の固定資産税評価額に一定の税率を乗じた金額の税金が課税されます。
標準税率は4%となりますが、令和9年3月31日まで 3%(住宅以外の家屋は4%)の軽減税率が適用されています。
また、一定の要件を満たした特例適用住宅を新築した場合は、建物の評価額から1,200万円を控除した額に軽減税率を乗じた金額となります。
長期優良住宅の場合は、1,300万円の控除となります。中古住宅でも耐震等㋑一定の要件を満たしていれば同様に1,200万円の控除が受けられます。
宅地(住宅の土地)に関して、令和9年3月31日までに取得した場合は、固定資産税評価額の1/2が課税標準となります。
軽減措置が 2年延長されました!(令和4年3月31日まで)
Point8 住宅ローン控除が延長・拡大! ~ 所得税・住民税 ~
住宅ローン控除とは、住宅ローン残高の1%を所得税から返します(控除)という制度です。
所得税から控除しきれない場合は、課税所得金額の7%を上限に最大136,500円まで住民税からも控除してくれます。
本来は平成25年で終了する制度でしたが、消費税増税に伴い今のところ令和3年まで延長されることとなりました。さらに平成26年4月1日から入居された場合、控除対象の年末ローン残高が2,000万円から4,000万円に年間控除額も20万円から40万円まで引き上げられました。
単純に計算すると、ローン残高3,000万円だとすると
現行では上限2,000万円なので、 2,000万円 ×1% = 20万円 の控除
平成26年春以降は上限値以内なので、3,000万円 ×1% = 30万円 の控除
となります。これが10年間続くということです。(当然残高が減っていきますので控除額も減少します。)
ただし、住宅ローン控除を受けるためには一定の要件がありローンを組んだ人が誰もが控除を受けれる訳ではありません。
なお、長期優良住宅や低炭素住宅にはもう一段上の税制優遇があります。ただし、性能が向上する分建設費等も高価になりますのでご留意ください。
これから相続対策をされる方も、住宅を取得される方も必ず関わってくる税金のお話です。
税金を軽減する場合、適用要件や自己申告など複雑な内容もあります。
また、時限減税の部分もありますので、不動産所得の際は特に時期を注視してください。
相続で活用される場合も、不動産所得に関する税制やその他税制をチェックしておくことで新しい不動産活用の道が見つかることでしょう。
ご自身で考え込まず、ご不明な点がございましたらお近くの税務署や税理士などに問い合わせてみるのもひとつですが、
弊社では相続対策・不動産売買/活用・建築設計等を一括でサポートいたしておりますので、お気軽にご相談ください。